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次の日、ですけれども。
犬川さんに叩き起こされた猿野くんと雉谷くんは、朝陽が昇ってから家に帰りました。そしてお母さんにしこたま怒られました。
桃田さんは、犬川さんに何度も謝っていました。無理もありません。桃田さんは、この神隠しを暴こうとした首謀者だったのですから。首謀者だけあの場に来なかったのは、とても情けない話です。
あの日、なぜか急に体がだるくなったことも話していました。
雉谷くんと猿野くんは、あの後何が起こったのか覚えておらず、ずっと眠っていたと話していました。
そして、また何事もなかったかのような日常が始まりました。
──あぁ、何とつまらない結末でしょうか。
ありえなくありません? どうして私がこんなに手を尽くして、桃田さんに化けて、犬川さんたちを騙そうとしていたのに、それが、たった一人の人間によって無かったことにされるなんて。いくら私が、人間のことが大好きで早く成り代わりたい妖狐さんでも怒ります。
おまけに大嫌いな強い光まで浴びてしまう始末です。もう散々です。異界へ帰りたいです。
だって、人間の数なんて腐るほどいるから、2、3人いなくなったっていいじゃないですか。
あなた方は知らないと思いますけどね、妖怪なんて世の中ゴマンと居ますよ。人のふりしてる妖怪なんて結構ポピュラーですよ。
ついでに言うなら、この仁宮町の人口は32,539人ですけど、そのうち3割は、私たち妖怪さんと入れ替わっています。もっと言うなら、今の日本の総人口は1億2,622万人ですけど、本当はもう2割、2524万人が既に入れ替わっています。人類侵略は、私たち妖怪たちのブームなのです。
人間のルールや文化がわからずに、交通事故とかバカッターとか起こしたり、元の姿に戻るために、着ていた人間の心臓の活動を停止させて、自殺事件と勘違いさせてしまったりして、色々お騒がせしています。ごめんなさいね。
妖怪と人間は共生関係にあるのです。私達は人間に成り代わり、そして人間は、妖怪にお願いをするのです。
“こいつはもういらないから、この世から消してくれ”と。
“地球のライフサイクルが今壊れているから、人間を秘密裏に消してほしい”と。
何とも呆れた生き物ですね。人間というのは。
ごくごく、と自販機でコカコーラを飲みながら、私は神様のように、愚かな人間たちに嘆きました。炭酸飲料も、だんだん癖になってきましたね。人間の文化が身に染みてきているのでしょう。
──さて、時間です。次の標的が待っています。
今度の標的は、昨日の子どもたちを連れ去るように命令した、仁宮町町長さんの秘書です。眼鏡をかけたお姉さんですから、ちょっとだけ会うのが楽しみです。
バレなきゃいいなぁ、と思いながら、標的の親友に化けて、今日も私は神隠しを行うのでした。
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