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それから、破顔一笑。
天から注がれる青白い光に身を委ねて、涙する。
きっと、これが最後、理性の残った李徴の贖罪。
涙で禊をすること。
興奮した私は、あれから家に帰ると零時を回っていて驚いたことを覚えている。
翌日も、三年生が抜けた部室で、音響いじりをやる。
結局、私たちの部はいい作品だったし、いい演技だったけど、上には上がれなかったのだ。
ぽつぽつと人が集まりだして、ほぼ全員が集まったところで、志帆ちゃんが勢いよくドアを開け放った。
「次のコンクールは上を目指すよ!」
開口一番はそれだった。
それは、部の皆もいつもとは違うモチベーションだということを悟る。
「競う演劇」「伝える演劇」をするということ、部の皆がこれまでやったことのない演劇だった。
志帆ちゃんは語りだす。「自己満でこの部活を続けるのも楽しかったけど、部活をもっと学校の皆に認知してもらうって目的のために、伝える演技をするっていうのも有意義なものじゃないかな」爛々と目を輝かせ、続ける。
「ていうのも、上に上がれるのに、自己満同士が集まったから逸材を埋没させてたんだって気付かされたよ、ね、マキちゃん」
それまで静かに聞いていた部員が、志帆ちゃんの指名で半信半疑で私を見る。
「……」
上手く言葉が声にでない。
周りも私が無口な人間だと知っている。だから、自己満同士が集まったからといって、私の配置は間違っていないと信じて疑わない。
志帆ちゃんに「え、マキさん、こんなだよ? 嫌がらせのつもりだったら、ちょっとそれは……」と私を擁護する人さえいる。
それでも、志帆ちゃんは笑っていた。「嫌がらせじゃないよ、私はマキちゃん主役の脚本、書くから」自信満々に言われても、私は迷惑きわまりなかった。
「……」
でも、自分の意見すらまともに言えなかった。
周りもだんだんと志帆ちゃんに嫌疑の目を向け始める。「何を血迷ったか」「自己満なんて嫌みを垂らして」それぞれの思いが、私には痛いほど伝わってくる。
それなのに、私は声を発することが出来ないまま。
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