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目が覚める。
天井を見つめる私は、生きていた。
「あ、目が覚めたね、マキちゃん」
志帆ちゃんが、隣に座っていた。「ごめんね、あの場面で私もつい口が滑っちゃって。言うつもりはなかったんだけど」私の胸中を悟ってか、八の字眉になっている。
「今からさ、ちょっと筆談しよう」紙とペンを最初から手元に持っているあたり、私に声を出させるつもりは毛頭なかったようだ。
さらっと「昨日見たのが初めてじゃないんだよ」私の知られたくない部分をストレートに伝えてくる。
私は「黙っていてほしかった」と素直に書いた。
志帆ちゃんはにんまり笑って、「うんうん、やっぱりマキちゃんは主役できるよ!」。
「マキちゃんはもとから演技が上手かったんだね。あの公園は私もよく、脚本が詰まったときに息抜きに来てたんだ。そしたら、練習中の作品を演じてるんだもの、ビックリしたよ! でも、納得もしたよ。だって、練習も本番も、音響はセリフを覚えなくても、裏方だし台本見ながらでもできるのに、一切なしで音響の役割を果たしていたし。台詞は全て頭にあるってすぐに気づけなかったよ」
ノートは次のページに移り、「多分、毎回好きなキャラクターを演じてたんだと思う。楽しそうだな。学校では表を出せない分、ここで発散してるんだな。そんなところだろうとばっかり思ってて、このことはマキちゃんにも皆にも黙っているつもりだった」。
また、ページをめくる。
「でも、昨日も同じようにたまたま、公園に行ったらマキちゃんが、同じように演技してたけど。正直、震えたよ」
また、ページをめくる。どんどん字が雑になって、書きなぐるような速さで書き上げる。
「高校生の演技で、泣いてしまった」
「私たちが半ば同好会のような活動だったことは、別に悪いことじゃない。だけど、マキちゃんの演劇で感動した時、上に上がって、レベルの高い演技を吸収できるんじゃないかって。伝える演技と自己満の演技の違いを思い知ったよ」ノートはどんどん志帆ちゃんの言葉で容量が減っていく。
「でも、マキちゃんは無口。でも、公園では表現者になる。きっと大人し過ぎるだけかと思ったから、我慢しようと、思ったのに」
「マキちゃん、昨日、最後に泣きながら、舞台で演じてみたかったって言ったよね?」志帆ちゃんはここだけ、声にした。
私はノートを受け取り、ゆっくり書いた。
「場面緘黙症で、学校では話したい意欲はあるのに、声に出来ない」
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