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志帆ちゃんに打ち明けた後はよく覚えていない。気付けば、志帆ちゃんは泣きじゃくっていて、「一緒に頑張ろう。舞台に出よう」と前向きな回答を貰ったことだけは頭の片隅に残っていた。
暫くして、志帆ちゃんが私主役の脚本を書き上げてきた。
数人は志帆ちゃんの傍若無人さを感じて抜けてしまった。だけど、寧々ちゃんは台本を受け取り、内容を確認している。
「……これ、いつものドタバタコメディチックに仕上げてた感じじゃないわね」
「この作風は、詰まらずに書けたんだ」
「ロミオとジュリエット。認知度が高くて、定番だけど、奥が深く情を乗せるのが難しい作品……マキのための作品とでも言いたげな作品に作風で苛々するわ。みんなが知っている作品でも新しい一作品として成り立つっていう自信の表れみたい」
台本を乱雑に床に叩き落とす。
「私がジュリエット、やるわ」
私はあれから、志帆ちゃんに連れられて、部活に顔を出さずに、病院に通った。
心療内科で、間隔をあけて通院するのが望ましいのに、時間がないから、と毎日通わされた。
これだけ毎日一緒にいたので、ロミオとジュリエットが今回の作品であることは知っていた。そして、「ジュリエットは寧々にやらせたい」という希望も。
志帆ちゃんは挑発的に「それ、マキちゃんの実力を確かめることと、張り合いを兼ねてるな」台本を拾い上げて、ニヒルに笑う。
「……そうね、マキの演技が主役に値しなければ、音響に下がってもらうだけよ。私だって、ずっと主役やってきたもの。上に上がりたい思いだって、触発されれば、誰より強くなるものよ」
睨みを返す寧々ちゃん。
「私……頑張ります」
「マキ!」、「マキちゃん!」驚愕の眼を向けてどうしたんだろう、二人とも、なんて思っていたら、「声……」と周りがざわつく。
「っ、私……こ、ここ、声」
「うん、出てる! 話せてるよ」
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