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記録1 龍遣い見習い『末廣 レン』
放課後を告げるチャイムの音。それは、私が机から解放された合図。
放課後を告げるチャイムの音。それは、私が新たな拘束を受ける合図。
私はスクールバッグを乱暴に掴み、図書室へ急いだ。
時間がない。名門、竜樹高校の試験は近い。
思い思いに目的地を目指す生徒の波をかき分けて進む。
「す~えひ~ろさ~ん」
馬鹿にしたような呼び方に、私の足が止まる。
振り返ると、澤見と牛田がいた。
彼女らを一言で説明するなら、いじめっ子だ。
この中学に入学してから、やたらと絡んでくるギャルだ。
一年生の春、二人に恐喝されたことがあった。たまたまその時の音声を録音していたため、生活指導の教師にバラした。そのおかげか、金や暴力でいやがらせをされることはないが、この大胆な行動のせいで、すっかり目をつけられてしまった。
こんな地味で陰キャな女子に三年間も付きまとっているなんて、さぞ暇なのだろう。
そうでないのなら、彼女らもまた友だちがいないのだろう。
そう思った瞬間、腹の底から咽るような笑いがこみ上げてきた。
陰キャと不良は紙一重ではないか。
学校という特殊環境に適応できない。ただのはぐれ者にすぎない。
「あれあれ~? ムシ~」
澤見は回り込む隙を伺うように隣を行く。
「待ってよ」
牛田は後退できないように背後に付く。
「どこ行くのよ。何無視してんのよ」
澤見は語尾に怒りをにじませ。立ちはだかった。
「図書室」
私はそう答えながら、澤見の脇を通りすぎる。
追いかける足音は聞こえなかった。
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