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連れ立って学食に向かう。
学生食堂──通称・学食。
この学校では教室で昼食を摂るか学食で昼食を摂るかの二択になることが多い。購買では学用品の他に提携している駅前商店街のパン屋から卸された惣菜パンや菓子パンを買うことができるが、そういったものを学食内に持ち込むことも可能だし、家から持参した弁当を持ち込むこともできる。尚斗の場合、少食に輪をかけたような極度の偏食で且つ特定のものしか自炊で作ることができない。そんな経緯から常にホットコーヒーを持参しているわけだが、月冴に誘われた手前、なにも食べないという選択肢は取れない。
先に席を取ってくるという月冴と別れ、入口に置かれたメニュー表と食品サンプルの並んだサンプルケースをしげしげと眺めた。日替わり定食、カレーライス、麺類はうどんか蕎麦かラーメンかミートソーススパゲッティ、あとは三種類ある丼で、デザートの類はアイスとプリンのみだが値段もすべて八〇円と手頃である。アイスは配膳カウンターの奥まった部分にある冷凍ケースから、プリンはその横の小さな冷蔵ケースから好きなものを選べるシステムのようだ。少量注文ができるのは丼物か麺類、あとはカレーだけ。いずれにしても食べるのには骨の折れそうなメニューばかりである。
「尚斗、食券買った?」
「食えそうなもんがねぇんだけど、余ったらお前食うか?」
席に弁当箱と飲み物を置いてきたという月冴が顔を覗かせる。が、口をついて出たのはそんな言葉で。正確には〝食べられるものがない〟のではなく〝食べきれそうなものがない〟なのだが。
「えぇ……少なめにしてもらっても食べきれなさそう? お蕎麦ならのどごしがいいから、さらっとはいるんじゃない?」
「じゃあ食えなかったらお前が食うってことで」
これで〝月冴が勧めたから選んだ〟という逃げ道を作ることが出来た。小銭を券売機に入れ、かけ蕎麦の食券を買う。もちろん少量の方だ。食券を配膳カウンターに差し出して待つこと数分──できたてのかけ蕎麦がトレイに乗せられる。風味豊かな出汁の香りに少しばかり食欲を唆られる。
月冴が取り置いていた席に腰を落ち着け、二人して向かい合うと手を合わせ「いただきます」と、どちらからともなく呟いた。
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