91人が本棚に入れています
本棚に追加
怖いのだろう──なにせいきなり快感の渦へと放り出されたのだ。事前になんの説明もなく、もちろん月冴自身の承諾も得ぬまま。尚斗の心にあったのは、酷薄な征服欲だけだった。月冴の質問には答えなかった。こんなことは、そう何度もないのだから。
入口を解して指先を埋め込み、ゆっくりと肉襞を擦りながら奥へと押し進める。往き戻しを繰り返してからもう一本、今度は中指を埋め込んで二本の指で弧を描くようにしながら肉襞を押し拓いて、浅い位置にあるしこりを執拗に刺激する。
指の腹でつつくたび、月冴の唇ははくはくと震え、白く浮き出た喉仏が息を飲んで上下した。指への締め付けが徐々に柔軟になってくると、今度はそれを引き抜いてしっとりとした己の性器を入口に充てがう。吸い付くようにした月冴の蕾は、呆気なく張りでた先端を飲み込んだ。指よりも太い質量に苦しそうに息を吐きながら、それでも拒絶の言葉を紡ぐことはない。ぐっ、と腰を押し出して奥へ侵入する。さきほど執拗に愛撫した部分を掠めるように、更に奥の柔らかな秘部を突き上げた。
「はっ、ぁ、……っんぁ、ふぁ、ぁあ──ッ!」
「くぅ、……さすが、に……キツ……」
奥の襞を突き上げる度に肉襞が容赦なく締め上げてくる。びくびくと跳ね上がる月冴の背をロッカーに押し付けるようにしながら、腰を揺り動かした。彼の性器から溢れた精液が尚斗が着ている体操服の裾に染み込んでいく。
「ひめ、の、い、っ……やぁ、やだ……、こんな……」
「ッ、ここまで好きにさせといて、よく言う……、ホラ、もう少しッ……」
瑠璃色の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。何度も快楽の渦に引き戻され、己の意思とは関係なく達する。
初めての人間にとってその恐怖は例え難いものだろう。かつての自分が──そうであったように。
慣れすぎてしまったのだと思う──人を想わず、人から想われず、ただ躰だけを慰めるという行為に。
だから、興味本位でここまで人を貶めることができる。月冴は尚斗とは正反対の人間だ。明るく活発で誰からも慕われる──そんな太陽のような存在だ。ならば──ならば自分は?
「ねぇ曇狼……俺と付き合ってよ……」
どうしてだか──無性に彼を手にいれたくなった。
自分とは正反対の──まるで太陽みたいな……そんな存在を。
押し付けていた背を支えるようにして腕を回し抱きしめると、力の籠もらない細い腕が、縋り付くように尚斗の肩に触れた。
最初のコメントを投稿しよう!