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僕はその手紙を、すぐに返そうとしたが、なかなかタイミングが掴めなかった。白柳さんと廊下ですれ違ったりすることはあっても、挨拶で終わってしまって、なかなか手紙を渡すに至ることが出来なかった。
そんなこんなで、一ヶ月経ったホワイトデーの日に、クッキーと同封して、白柳さんにお返しすることにした。
「白柳さん」
帰りのホームルームから出てくる白柳さんを出待ちして、僕は勇気を出して声を掛けた。コートを腕に提げた白柳さんが振り返る。
「宍戸くん……」
「これ、あの……チョコレートの……お返しです」
僕はそう言って、水色の紙袋を差し出した。白柳さんが嬉しそうに受け取る。
「ありがとう!」
白柳さんは、中を覗いた。僕は、その様子を確認して、今度こそ、ちゃんと手紙を読んでもらえると確信した。
「じゃあ、またね」
白柳さんは、そう言うと、手を振って去っていった。
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