白柳さんからのお手紙

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 そしてその次の日の帰り、靴箱を開けると、僕の外靴の中に、 「宍戸くんへ  白柳メイ」  と書かれた封筒が入っていた。僕の胸が、ドクドクと高鳴る。すぐに開けたい気持ちを必死で抑えて、僕は、胸の内ポケットにその手紙をしまった。  前と同じ電車の車内で、僕は恐る恐る折りたたまれた便箋を開く。 「宍戸くんへ  さっきの手紙のご用事なあに?」  僕は、  ――嘘だろ、この期に及んで……  と頭を抱えた。白柳さんに、僕は結局弄ばれているのか……?  なんて一瞬思ったが、じゃあなんで今回は手紙の存在について僕から追求したわけでもないのに、こんな手紙をくれたんだろう? と僕は疑問に思った。  そして、気づいた。その後ろに、二枚目の便箋があるということに。 「というのは、冗談です。  じつはこう言いながら、宍戸くんからの手紙、一年生の頃からちゃんと読んでました。  でも、そのとき、他の人からも告白をされていて……サメちゃんからのアドバイスで、本気かどうかを、確かめるべく、やぎさんゆうびんの真似をしてしまってました。  宍戸くんに一年生のときタルトと手紙をもらったときからずっと、私は宍戸くんのことが気になっていました。  そして、図書館で一緒に過ごしたり、今回のお手紙を読んでから、やっぱり私は宍戸くんが好きだなあ……って。  もし、宍戸くんが私にまたラブレターをくれるのなら、そのときは、 「さっきの手紙のご用事なあに?」ではない返事を書きたいと思います。 白柳メイ」  僕は帰りの電車の席に座ってその手紙を読みながら、顔をかばんに埋めた。自分では見えないけれど、耳がすごく熱い。  ――白柳さん、それは反則だよ……  ガタゴトと揺れる電車の振動以上に、僕の心臓は高鳴っていた。このまま僕は死ぬのかもしれない。死因は好きな人からの手紙を読んでのキュン死。  ――いや、まだ死ぬわけにはいかない。  僕の本気を伝える、白柳さんをあたたかく包み込むような、そんな手紙をまた書こう。    僕は、かばんから顔を上げた。ドア付近の電光掲示板には、僕が最初に白柳さんに手紙を書いたときの便箋を買った駅の名前が記されていた。僕は立ち上がって、人の背中たちに、すみません、と言いながら、電車を降りた。  春一番のような、あたたかくも強い風が僕を包んだ。
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