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僕は、持っていたルーズリーフの束から一枚紙を抜き取って、教科書を
台に、シャーペンで
「どうしたの?」
と書いて、白柳さんに見せた。白柳さんは、ほんの少しだけなにか言いたげな顔で、僕の目を見つめたけれど、軽く頭を振ると、
「なんでもないの。気にしないで、授業行きなよ」
と、僕の文字の下に、サラサラとした字体でそう記した。これが、僕にとってはじめての、「さっきの手紙のご用事なあに?」以外の、白柳さんからの手紙の返事になった。
僕は、
「大丈夫。白柳さんが泣いているのに、放っておけないよ」
とその下に書いた。白柳さんは僕の字を見ると、流していた涙を白くて長い指で優しく拭った。涙を片手で拭いながら白柳さんはシャーペンを取って、
「いつまでいるの?」
と書いた。
「白柳さんが泣き止んで、元気になるまで」
と僕が書くと、白柳さんは、ふうう、と息を大きく吐いた。
「すぐ泣き止むわ」
そう記してシャーペンを置くと、白柳さんは、涙が溢れないようにだろうか、顎をあげて、天井の方をじっと眺めだした。涙できらきらとした、白柳さんの瞳は綺麗で。僕はその目をじっと見つめた。
僕はふっと笑った。
「無理に泣き止もうとしなくていいよ。僕は白柳さんと一緒に居るの、嫌じゃないから」
白柳さんに、その紙を差し出すと、白柳さんの耳が少しだけ赤くなった気がした。もっとも、もともと泣いていたから、そのせいかもしれない。ふふ、と軽く笑い声をもらして、彼女はもう一粒だけ涙を流して微笑んだのだった。
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