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「白柳さんへ
お誕生日おめでとう。
掃除の時間とか、いつもありがとう。
ちょっとしたものだけど、ミニタルトを作りました。お口に合うと嬉しいです」
そこまで書いて、僕は2枚目のメモ帳に入った。メモ帳には、彼女が好きそうな、柴犬の絵がふんわりとしたタッチで描かれている。この手紙を書くために、わざわざ大きい雑貨屋のある駅ビルがある途中駅で下車して買ったものだ。
「白柳さん、こんなことを急に言うと、びっくりするかもしれません。だけど、僕は勇気を出して伝えたい。僕は白柳さんのことが好きです。
はじめて会ったときから、なんてかわいい人か、と思っていました。
もしよかったら、付き合ってくれませんか?
返事お待ちしています。
宍戸より」
僕は、丁寧な文字でそう書き終えると、丁寧に紙の端と端とを揃えて手紙を折りたたんだ。そして、その白い面に、「白柳さんへ」と書くと、茶色地に、黒い縁取りでケーキや紅茶のカップなどがおしゃれに描かれた紙袋の中にしまった。
書ききると、一気に疲れが出てきた。時計を見たら、もう夜の12時だった。僕は、その袋が崩れないようにいつもは汚いかばんの中から、明日はいらない教科書や単語帳を抜くと、紙袋を、そっとしまった。
そして、部屋の電気を消して、僕はベッドに横になった。
目を閉じると、白柳さんのふわふわしたくせ毛のセミロングや、色白の顔の中に美しく並べられた、つぶらな少し茶色っぽい瞳や、筋の通った形の良い鼻、下唇がぷっくりとしたきれいな口元などが思い出された。
本当に何もしなくてもかわいい。けれど、そんな彼女が笑うと、よりいっそう、花が可憐に咲くみたいに可愛いのだった。
――喜んでもらえるといいな。
そんな妄想の中で僕は眠りについた。
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