保健室

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保健の先生に大丈夫ですと言ってから保健室を出る。 ふらふらとした足取りで教室へ帰る。 もう体は平気。 心はあんまり平気じゃない。 英語の授業はもうとっくに終わってて、次あるのは来週だった。 もうそれまでは話しかけてこないだろうし、話すことはないんだろうな。 なんだったら、もう予習を見せるよう言いには来ないかもしれない。 渋谷の友人は明日にだって復活するかもしれないし。 またちらりと渋谷のほうを見る。 今日何度目だろう。 気になってならなくて。 もっと好きになってしまったと嫌でも感じさせられる。 もっと。 もっと話したい。 もっと近くで。 もっと。 欲求が多すぎて、叶わなくて、泣きそうだ。 まったくいつからこんなに涙腺が弱くなったんだか。 なんて。 ぐずぐず落ち込んでみたけど。 そんな暇はなかった。 そうだ。 あの手があった。 それなら。 渋谷と話せる。
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