下校デート

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電車に乗りスマホを開くと、メッセージが立て続けに二本入った。 渋谷と、桃子さんからだ。 ドキドキしながら、渋谷からの方を開く。 『さっき別れたとこだけど、もう会いたくなってきた』 という激甘のメッセージと泣いている猫のスタンプ。 早くないか? ……僕もだけどさ。 『そうだね』 文字だけ返す。 あまりスタンプを送るのは好きじゃない。 『今日の課題ってなんだっけ?』 渋谷からの質問に返事をする。 『数学と英語』 『数学わかんないから、教えてくれない?』 『電話だとわかりやすいんだけど』 ほんとは電話したいだけだけど。 いやまあ数学わかんないのも本当だけど。 渋谷の声、聞くと結構落ち着くし。 電話したい。 文字だけじゃなく。 声が聞きたい。 僕だけに話す声。 ……重いな。 でも、聞きたいし。 『いいよ、電話したい』 『夜の8時くらいに電話するわ』 やった。 これで声が聞ける。 嬉しくてスマホをぎゅっと握りしめる。 夜が楽しみになった。
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