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「ううん、ちっとも。今来たところ」
まさか、これをやれるなんて思ってなかった。
恋人同士のように待ち合わせをし、デートのように二人並んで歩くのだ。
なんかもう、幸福感で本気で死ねそう。
「ははw嘘付け。こんなに冷え切ってる。いつからいたの?」
にっこりスマイルに無言の圧が加えられる。
ドキドキしながら、あっさりと降伏。
「じゅ、10時半……」
「それは今じゃないよねー?」
「ソ、ソウデスネ……」
ひやり、と冷や汗が頬を伝う。
「あはは、マジにとんなって」
風邪引かないか心配~なんてさらっと言ってのけるから、こっちは心臓が、もちやしない。
そこで、今日はじめてまじまじと渋谷を見た。
渋谷はマフラーをしていた。
たぶんカシミヤ。
誰から、だろうなんていやなことを考えてしまう。
でもかぶらなくてよかった。
かわいい女の子がくれたものに、僕があげたものが勝てるわけないもんな。
いやな考えを追い払うようにふるり、と身を震わせた。
そしたらこんないやな人間はどこかへいってくれるだろうか。
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