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でも、幸福感でふわふわとした脳が、それ以上を考えようとしない。
今迄で一番近い距離で渋谷の体温を感じる。
渋谷の温かさが近すぎて、僕は熱されて溶けてしまいそう。
ぐるぐる巻きのマフラーはさっきの半分のはずなのにさっきより熱くて、渋谷を感じるんだ。
このまま溶けてしまいたい。
そしたら渋谷とひとつになれるんじゃないか、なんて馬鹿なことを考える。
「うん、これでよし。どう、寒くない??」
「う、うん、さむくない……」
寒い、と答えたらもっとくれるのか、なんて馬鹿な台詞をはきそうになる。
人は、何かひとつ満ち足りると、それ以上が欲しくてたまらなくなるようにできている。
渋谷が、恋人だったら。
僕の恋人だったのなら。
どんなにいいだろう。
どんなにか幸せだろう。
叶わない夢であればあるほど輝いて見えるのは、本当に恋心だろうか。
恋に恋してるんじゃないか、なんてちょっと不安を覚えたりする。
それも、恋の一部なんだろうか。
それでも、渋谷が好きで好きでたまらない。
一緒にいるだけで世界は輝いて見えて、顔を見るだけでなんだかほっとして。
叶わなくたって、これだけ幸せなんだ。
「あ、そうだ、プレゼント交換、いまするんだっけ?」
そう渋谷が切り出す。
こちらを振り向いて目を合わせてくる。
心臓の鼓動が本当に聞こえちゃいそうな距離で、だめだと思うのに、拍動は増す。
聞こえてくれるな、と思うのに聞こえて欲しいのが恋心なのかもしれない。
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