クリスマスデート

16/23

1539人が本棚に入れています
本棚に追加
/283ページ
でも、幸福感でふわふわとした脳が、それ以上を考えようとしない。 今迄で一番近い距離で渋谷の体温を感じる。 渋谷の温かさが近すぎて、僕は熱されて溶けてしまいそう。 ぐるぐる巻きのマフラーはさっきの半分のはずなのにさっきより熱くて、渋谷を感じるんだ。 このまま溶けてしまいたい。 そしたら渋谷とひとつになれるんじゃないか、なんて馬鹿なことを考える。 「うん、これでよし。どう、寒くない??」 「う、うん、さむくない……」 寒い、と答えたらもっとくれるのか、なんて馬鹿な台詞をはきそうになる。 人は、何かひとつ満ち足りると、それ以上が欲しくてたまらなくなるようにできている。 渋谷が、恋人だったら。 僕の恋人だったのなら。 どんなにいいだろう。 どんなにか幸せだろう。 叶わない夢であればあるほど輝いて見えるのは、本当に恋心だろうか。 恋に恋してるんじゃないか、なんてちょっと不安を覚えたりする。 それも、恋の一部なんだろうか。 それでも、渋谷が好きで好きでたまらない。 一緒にいるだけで世界は輝いて見えて、顔を見るだけでなんだかほっとして。 叶わなくたって、これだけ幸せなんだ。 「あ、そうだ、プレゼント交換、いまするんだっけ?」 そう渋谷が切り出す。 こちらを振り向いて目を合わせてくる。 心臓の鼓動が本当に聞こえちゃいそうな距離で、だめだと思うのに、拍動は増す。 聞こえてくれるな、と思うのに聞こえて欲しいのが恋心なのかもしれない。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1539人が本棚に入れています
本棚に追加