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ニコニコしてしまう僕を、渋谷も楽しそうに見てくれる。
でも馬鹿渋谷!!
気がつきやがれ!!
この距離でニコニコと楽しそうに僕を見つめるんじゃない!!
……まるで、少しでも動いたらキスできてしまいそうな距離。
そんな距離で、好きな人と、マフラーを分け合いっこして、ニコニコと見つめ合っていたら。
小動物のそれのような早鐘を打ち続ける僕の心臓はさっさとダメになっちまう。
でも渋谷はそんなことにも気がつかずに僕に聞くんだ。
「メリークリスマス、中野」
!!
まるで恋人にでも言うかのような響きで、僕はドキドキしてしまう。
「め、メリークリスマス……」
どぎまぎと恋人でもないのに恋人のような振る舞いをしてくれる好きな人に返事をする。
本当は、気がついていた。
僕らの関係は不思議すぎる。
恋人でも、友人でもない。
お互い話さなくなったらそれで切れてしまう関係。
僕らは、なんなんだろう。
今は、なんなんだろう。
ときめきや嬉しさ、照れなんかと一緒に僕に襲い掛かるのは、なんとも言いようの無い焦燥感。
渋谷。
僕は、お前にとってなんなんだ?
でもそんなことを聞いたら僕にとって都合のいいこのぬるま湯はなくなってしまう。
僕は、ずるい。
聞いてしまいたくて、聞けない臆病者な僕は、今もこうして渋谷の横で笑って過ごしている。
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