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突然泣き出した僕を渋谷は持て余しているようだった。
その空気感が鈍い僕にもわかるくらい伝わってきて、いたたまれない。
綺麗だね、と笑いあって腹の底にある焦りや不安なんか、無視できるほど強くいられればよかったのに。
そこまで器用じゃないからできなかった。
「ごめん、また迷惑かけたよな」
謝る台詞だけはこんなにサラサラ出てくるのに、なんでもっと。
言いたいことが言えないんだろう。
涙をさっさと止められるほど器用でもないし。
「ほんと、」
「いい加減謝りすぎ、流石にちょっと嫌かな」
なんか、もはや俺が悪いことしてる気分だわw
そう、おどけて見せて渋谷は言った。
気遣いを感じすぎて、ちょっぴり気まずい。
でも嬉しい。
「マジか、えっと……」
「黙っててもいーよ、お前なら気になんねー」
なぜだ?
なぜここまで僕に甘いんだ?
なんかちょっと怖い、と思うのは失礼なんだろうけど。
理由のわからない親切は、怖いんだよ。
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