クリスマスデート

23/23

1539人が本棚に入れています
本棚に追加
/283ページ
「わかった、寒いしさ、歩きながらでいい?」 ほら、すごい綺麗な通りじゃん そう渋谷は言って、爽やかに笑ってみせる。 「うん」 「えっと、それで、聞きたいことってなんなん?w」 僕は言葉と質問を選びつつ、返した。 「なんでこんなによくしてくれるの?」 妙に非難がましくなってしまったこのセリフは、僕のいいたかった意味と真逆な意味に聞こえる。 「え」 そんなことが気になってたのか?という目で渋谷が僕を見る。 というか、気に入らなかったのか、ともとれる目だった。 「あーえと、好きだから?中野ってほら、いい奴じゃん、俺好きだよけっこーw」 英語のノートも貸してくれるし 渋谷はこともなげにそうも付け加えた。 それは、友人宣告ですか? それは、僕が、都合のいい人間だということですか? 渋谷、答えてくれよ。 口にできない僕の質問に答えて。 まるでヒステリックな女みたいだ、と自嘲した。 見たことないから、そうなのかはわからないけれど。 「あーそうなんだ、あざす」 頑張って、いつもを演じようとしたけれど、上手くできなかったみたいで、すぐに見破られた。 「へえ、なにこの答えも嫌なのかよ!」 「嫌じゃない……けど!」 「けどなんだし!!」 喧嘩になってしまった。 そんなことしたくなかったのに。 僕らはイルミネーションの煌めく大通りはもうとっくの昔に通り抜け、閑散とした道を歩いていた。 そんなことにも気がつかないくらい、僕らは、互いを根拠もなく罵りあった。 「もう知らねー!中野なんか知るかバカ!」 「……っ僕だって!!」 分かれ道がキリ良くあって。 僕らはそこがどこにたどり着くかわからないままそこで別れた。 とっくに迷子になっていたから、ここがどこだかなんて知らなかった。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1539人が本棚に入れています
本棚に追加