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『俺もごめん。喧嘩する気はなかったし』
まあ、そうよな。
ええと、これは僕が返事するターンだよな。
こんなにメッセージのやり取りで緊張するのは初めてだ。
『いや、僕が勝手に、迷惑かけて』
ここまで打って、いや、こうじゃないな、と思った。
多分、僕らがすべきことはこれじゃないのかもしれない。
『うまく打てないや、ええと、電話でもいい?』
返事が来るまで、数分かかった。
『わかった』
わかった、というそれだけの返事が、なぜか素っ気なく思えて、ドキドキする。
どうしよう、本当は嫌なんじゃないか。
あの数分はなんだったんだ。
ああ。
いや、きっとこんなこと考えている場合じゃないな。
電話しなきゃ。
アプリの通話機能を使って、電話をかける。
コール中、コール中。
「もしもし?中野?」
いつもより低く感じる機械越しの渋谷の声に、否が応でも胸が高まる。
「あのね、渋谷」
言わなくちゃ、思ってること。
想ってることは言えなくても。
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