センス皆無のデート

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ピンポーン 間の抜けたありきたり極まりないチャイムが鳴る。 来客を知らせるチャイム。 渋谷だ!! 急いで走っていきたいのを我慢して、小走りに荷物を持って玄関へと向かう。 そう。当日である。 時間は11時ジャスト。 すげえ。 「はーい」 なんだか格好良くないけれど他のはうまくできる気がしないからいつものように返事する。 「弘通くんと約束している渋谷翔です」 「あ、うん、今行く」 ちょっとよそ行きだけど渋谷に初めて下の名前で呼んでもらえた。 脳内のお花畑は大騒ぎ。 嬉しくてスキップしそうなのをこれまた我慢しつつタイミングを気にしながらドアを開ける。 「迎え、ありがと」 あーーもうなにこれ幸せすぎるでしょ。 彼氏みたいに迎えに来てくれるってのが、何とも言えずもどかしい気持ちになる。 嬉しい。 駄目だ、やっぱり浮かれ切っちゃってるや。 しょうがないよね、やっぱり嬉しいし。 しかも、めっちゃ格好いい。 顔はいつものことだけど、服装も格好いい。 絶対違うんだろうけど、僕のためにお洒落してくれた、と考えてしまう。 「じゃあ、行こっか」 「うん」 「あ、あけおめことよろな」 「あーそうだね。よろしく」 シンネンノゴアイサツ、なんちゃってと渋谷がおどけて見せる。 そういうとこも、好き。 「じゃ、センス皆無なデートに行きますか」 「え?」 「は?」 渋谷が、しまった、という顔をする。 え? よろこんでいいの? どういう意味? デートって?? 渋谷も、そう思ってくれてたってこと??
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