下校デート

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僕と渋谷は正式に付き合うことになった。 でも、読者のみなさんにはもう少しお付き合いいただきたい。 僕と渋谷は、例のデートで、学校では極力いつも通りにすることになった。 僕は、おとなしく平凡に暮らしていたいし。 でも、毎日一緒に帰ることになった。 いわゆる下校デートってやつだ。 ……渋谷に、してみたかったんだといったら、毎日しようと言ってくれた。 正直、今日はニヤケ顔にならないようにいつもの顔をキープするのが大変だった。 あと、数分。 そしたらこの数学が終わって終礼をして。 そしたら。 帰れる!! 下校デート!!!! 自信のない数学教師はやっぱり渋谷に頼りない目を向けながら授業を進める。 あと、五分。 三分……。 キーンコーンカーンコーン チャイムといえばこれ!!みたいなあの鐘の音がスピーカーからひび割れて聞こえる。 こんなに嬉しい音に聞こえるのは初めてかもしれない。 トイレ行きたかったときを除けば。 輝きのファンファーレだ。 素晴らしい。 しかし、そううまくはいかない。 なんだってもう、こんな小難しい数式を書き始めるんだあの教師は! xがどうだとか言いながら数式をチョークの粉をこれでもかと飛ばしながら数学教師が書き立てる。 ノートに走り書きしながら、早くしろと念を送る。 送りすぎると、パニックになってやり直しになるから量を加減する。 いや、もうこの際なんでもいいから早くしてくれとじりじりと祈ること5分。 最後にカーンとチョークを置こうとして取り落とし、真っ二つにして授業は終わった。 「ありがとーございましたー」 チョークよ、尊い犠牲であった。冥福を祈る。 なにはともあれ、デートだ。
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