下校デート

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手が繋ぎたい。 いや、往来だし? 男同士だし? あんまりやらない方が、いいんだろうな。 とは、思うよ? でも。 手、繋げたらなぁ。 だって恋人同士じゃん。 繋げたら、嬉しいじゃん。 繋ぎたくもなるよ。 他の人はどうか知らんけど。 「駅で、お別れだよね?」 「うん」 なんせ、渋谷区と中野区だからね。 家が近かったらいいのに。 そしたらさ、ギリギリまで一緒なのにね。 「あはは、寂しい?」 「……まあ」 渋谷は寂しくないのか? もしなんとも思ってないならやだなと思いつつ、曖昧に誤魔化す。 「俺も寂しいわーwでも明日もあるじゃんよ」 メッセージ送ってねとカラカラと渋谷が笑う。 プラス思考かよ。 羨ましいわ。 僕も目指そっかな。 「そだね」 駅舎が見えてきた。 見慣れた駅舎が恨めしい。 あと5メートルでいいから遠のいて。 いつもと真逆なことを考える。 「じゃあ、」 ね、は掻き消された。 元気な声に。 「わー翔と中野さんじゃん!何してんの?」 桃子さんだった。
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