1539人が本棚に入れています
本棚に追加
/283ページ
「えー帰るとこ」
「じゃ、翔一緒に帰ろー!」
くるりと僕を振り返って桃子さんがにぱっと笑った。
可愛い笑顔だなと思った。
僕は別に、女の子に欲を覚えないだけで、可愛いとかは普通に思う。
ゲイってそういうのなんじゃないかね。どうなんだろ。
「冬休みから渋谷さんちに住んでるんですよー」
そうなのか。
一緒の家に帰れるのは羨ましいけれど、彼女にとって“渋谷さんち”に暮らすというのは、もしかしたらあまり嬉しくないのかもしれない。
「そうなんだ」
「そうなんですよー!!あ、連絡先!交換しましょー」
「え?あーいいけど?」
赤外線通信で連絡先を交換する。
「連絡しますね!」
「うん」
楽しそうに言われて、こっちも嬉しくなってくる。
その時、渋谷が不機嫌そうに言った。
「もういい?」
ハッとした。
デート中だった。
「あーうん、ごめん」
「あ、いや、怒ってないから」
「そう?」
「おう、また明日な」
「うん、じゃあね」
桃子ちゃんがちょっとニマニマした。
でもお仲間(腐女子)のにおいはしないから、ちょっと不思議。
渋谷に半分引きずられるように連れて行かれる桃子さんは名残惜しそうに手を降ってくれて、嬉しかった。
仲良く、なれるといいな。
せっかく連絡先を交換したし。
最初のコメントを投稿しよう!