下校デート

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「あはは、何そんな慌ててw」 「いや、ドキドキして落ち着かなかった」 「何それかわいい」 かわいいって言ってもらえた。 嬉しい。 正直、どこがかわいいのかはわからないけど。 いや、普通男は嬉しくないのかもしれないけど。 でもさ、好きな人にほめられればたとえどんな風に言われても嬉しいよ。 「あ。忘れてた、数学やろっか。わかんないとこあった?」 「すまん、なんもしてない」 「マジかwとりあえずテキスト開いた?」 「うん、今」 「今回の単元わかる?そもそもだけど」 ごめん、さっぱりわからん。 もはや日本語にすら聞こえてない。 現状を正直に渋谷に話すと、ため息をつかれた。 「わかった、一から解説するわ。時間ある?明日どっか寄ろう。そこで教えるわ」 やった!!デートだー!! なんて、素直に喜べるわけないわ。 さすがに申し訳ない。 「え、でも」 「いいよ、デートでしょ?楽しみだね」 「いやさすがに……」 「往生際悪いねw諦めてよ。俺も復習になるし、丁度いいじゃん」 いや、往生際悪いのは自覚してるけどさ。 やっぱ申し訳ないわ。 「えー……」 「わかった、次は中野が英語を教えてね」 ああ、それなら……。 「あーうん、それなら」 「ふぅー一仕事だわw」 「ごめん」 「いいのいーの、そーいうとこも好きなんだから」 やだなあ、照れるじゃないか。 しかしまあ、何でこいつはそうさらっと恥ずかしげもなくこんなこと言えるんだろ。 うらやましい。 僕も、素直に口にできればいいのに。 あ、そういえば、渋谷にいつか聞きたいことがあったんだった。 顔を見たら素直に話せる気がしないから今しかない。 せーの。 心の中で自分に合図して。 息を吸い込む。 音にして吐き出す。 「あのさ、渋谷って僕のどこが好きなの?」 心臓の音は電波に乗らないから。 それでも呼吸が荒くならないように気をつけ、息を潜めた。
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