下校デート

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「どこだと思う?」 思わずそのまま聞き返してしまう。 「えーなにそれ。教えてくれるんじゃないの?」 不満げな渋谷の声がする。 思わず笑ってしまう。 「そういう、ちょっと子供っぽいところも好きだよ」 「なっ……」 渋谷の動揺した声がしてちょっと意地悪な気持ちになる。 「あと、アホで馬鹿なところ」 「いや、ひどくね?」 「あはは、ごめんて。でもほんとに好きだよ」 妙なテンションだな、とどこか遠いところで思う。 「なにそれ、今日サービスデーなの?」 奇遇だな。 僕も同じこと思ってた。 だからハイなのかも。 「あと、格好いいところ」 王子様みたい、と思っていたけれどそれは言わないでおく。 「ふは、ありがと」 よく言われるんだろうな。 さらっとこっちには返事が返ってくる。 「以上」 「……思ってたより言われるのって照れるな」 「うん」 ほんとそう。 言うのもだけど。 普段自他共に認める素直じゃない人間の僕にとっては結構かなり。 ちょっとほっとした。正直。 渋谷が「なんとなく」で僕と恋人をしてたらいやだなあと思っていた。 もちろんあらぬ疑いなんだろうけど、でもやっぱり。 なぜなのか、すごく不思議だった。 別に綺麗でも何でもない同性と付き合おうなんて、結構変わってると思う。 いや、偏見がないわけじゃなくても、今は少し良くなっているし、そういうものなのかも。 渋谷が僕を好いてくれてる。 後のことはともかく、これだけは確かみたいだから。 ほっとした。 「ねえ中野」
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