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渋谷と、永遠の愛を誓ってから、一週間。 僕は極めて平和に過ごしている。 たぶん。 というかそもそも、あれは永遠の愛の誓いでよかったのだろうか。 だんだんと不安になってくる悪い癖をなおす気もないままに不安になってみる。 そうすると、渋谷がちょっと甘やかしてくれたりするから、つい。 なんとなくダメな人間になりつつあるけど、しょうがないのかもしれない。 だって、幸せだし。 「なーかのっ帰ろーぜ」 「うん!」 友人の新宿三人衆には最近楽しそうだねと笑われてしまった。 ついでに嫉妬のヘッドロックと祝福ももらった。 何も話してないけど、なんのお祝いだ?? ……まあ、いいか。 なんとなく僕をニヤニヤした顔で見て手を降ってくる三人に手を振り返して、渋谷の後を追う。 「中野、桃子と仲良いらしいね?大丈夫?迷惑かけてない?」 まるで息子の心配をする母親の顔のようだ。 いや、性別真逆だし。 「あはは、まさか。むしろ僕がかけてるかも」 「それはないよ」 根拠もなく言い切ってくれるのが嬉しい。 いや、根拠はあって欲しいけど。 しかし、実際桃子ちゃんとはめっちゃ仲良くしてる。 正直楽しい。 いい子だし、意外と話が合うし。 「あれっ中野さんと翔だー!!」 「……」 渋谷がちょっと不機嫌そうにする。 嫉妬だと良いな。 だったら、悪いけど、めっちゃ嬉しい。 「一緒に帰ろー!」 「うんうん!」 思わず楽しくなって勢いよくうなづく。 手を取り合って女子のように再会を喜んでいると、渋谷の手が容赦無く2人を離した。 「きゃーひどーい!」 桃子ちゃんが大袈裟に騒ぐ。 渋谷が一言、ごめんと謝ってから、こっちを振り返った。 「でも中野も悪い!これは浮気だ!!」 ちょっとドキリとした。桃子ちゃんにもしバレたら。 でも渋谷が笑い出したのを見てホッとする。 「あはは冗談冗談w帰ろww」 渋谷は笑いながら僕としれっと手を繋いだ。恋人繋ぎ。 今までそんなこと学校内でしたことなかったから、焦った。 しかし反対の手も誰かによって塞がれた。 「ずるいってば翔ー!!」 けらけらと笑いながら手を繋がれた。 こっちは普通に繋いだだけ。 三人ならまあいいかと思い、渋谷の手の感触を味わう。 あったかい手だ。
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