イチャイチャ日和と誕生日

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駅で待ち合わせしていた渋谷と合流し、学校へと向かう。 登校も一緒にすることになったのだ。 おかげで朝からハッピーである。 「てかさ、中野って桃子と仲良すぎじゃない?」 「あーうん、友達だし?」 「……まあ、そうだけど」 渋谷が複雑そうな顔をする。 別にそんな顔をする要素なくないか? 「何?」 「……もうちょっと、控えたら?」 「……普通じゃない?」 渋谷が微妙そうな顔でうーんと唸った。 「あーーーうーん、そうだな、ええと」 なんだろう。 そんなにメッセージのやり取りは良くないのだろうか。 「あ、もしかして桃子ちゃんが嫌がってた?」 「いやそうではないけど。むしろ嬉々としてやってる」 「え?じゃあ」 何かを逡巡していた渋谷はいきなり両手をパチンと打ち合わせ、僕の目をじっと見た。 「単刀直入に言うわ。嫉妬するから少し減らして」 「なっ……!!」 僕がびっくりすると、渋谷は真っ赤になって言った。 「だって、なんかやじゃない?中野は俺が誰か女とずっとメッセージしてたらやじゃない?」 「あーまあ確かに嫌だけど。でも桃子ちゃんをそういう目で見たことはないからなー」 「それはそうでも俺は嫌なの!」 何それときめいた。 嫉妬してくれんの? とはいえ嬉しさは押し殺して平常運転を心がける。 「まあそこまでいうなら控えるわ、ちょい待ち」 僕はスマホを取り出し桃子ちゃんにメッセージを送った。 『ごめん、渋谷にメッセージ減らせって言われた泣。少し減らそう』 横から渋谷が覗き込んでつぶやいた。 「女子の会話?」 「うん、こんな感じだからよくね?……って、ぎゃあああああああ」 僕はあることに気がついて叫んだ。 渋谷がのぞいているところは昨夜の会話で、お互いの彼氏の惚気大会だった。 マジかっこいい、とか、あの仕草が好きとか、そういうのを2人であげていくだけのやつ。 「ダメダメダメ見ないで!」 「……やば、嬉しいけど恥ずかしすぎるわ」 渋谷が真っ赤になって、しゃがみ込んだ。 僕の顔も赤くなるのを感じるが、なんとか冷静さを保つ。 「いや、遅刻するし歩こ」 「わかった……けどやば、ええ、桃子これ読んでるんでしょ?えぇ……」 「うん」 ああーーっと渋谷が絶望の声を上げる。 でもその声に嬉しそうな響きを感じたので僕は放っておいた。 ちなみにその日、僕らはギリギリで門に駆け込む羽目になった。
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