イチャイチャ日和と誕生日

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……ああああああああ恥ずかし! 無理無理無理! いや、言っちゃったからするよ! その、僕だってしたいし! 恥ずかしくて照れちゃって、顔を真っ赤にする。 間違いなく、トマト並み。 真夏の完熟トマトといい勝負。 「えええ、マジで!?」 渋谷が叫んだ。 やっと脳が追いついたらしい。 その気持ちはよくわかる。 「……ん」 軽くうなづいてから、いたたまれなくなってそっぽを向いた。 無理がある。 「マジか、マジか!!」 衝撃が体を襲う。 思わず瞑った目を恐る恐る開くと、渋谷に抱きつかれていた。 「うわああああここ道路!!」 「あっ……!ごめん!!!!」 嬉しかったけど、引き剥がすとあっさり剥がれた。 僕ら初ハグ、ですね。 ふふふ、ちょっとどころかめっちゃ嬉しい。 幸せで死に至りそう。 いやでもしかしここは道路である。 寂しいけど、ひっぺがすべきなのだ。 「じゃ、明日、楽しみにしてる」 そういうと渋谷はウインクした。 めっちゃ綺麗なウインクで、一瞬夢かと思った。 照れたような顔で、渋谷は笑った。 「あはは、初めてウインクしたわ。どう、ときめいた?」 ……あったりまえだろ!! 死んだ。 多分今日は命日だ。渋谷が格好良すぎるから死んだ。 「まあね」 やっぱり可愛げのない返事になった。 すこしは積極的になれたかと思ったけど、やっぱりあまり進歩してないな。 駅で別れる時、寂しいけれど、明日が楽しみで、嫌じゃなかった。 明日のこの時間、僕はどんな気持ちなんだろう。 ニヤケ顔を隠すようにマフラーに埋もれて、1人電車に乗った。
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