イチャイチャ日和と誕生日

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「あらやだぁ〜翔ったらもう連れ込んだの?例の子でしょ?やる〜ぅ」 お母さんがプッと吹き出して渋谷を小突いた。 「えーねえ、紹介してよ」 「やだよ」 「ケチだな〜wいいじゃない、減るもんじゃないし」 え? あれ? あの、もしかしてあっさり受け入れられてる? 「……しゃあないなー。ごめん中野、変な親だけど、これが俺の母さん」 渋谷がすっと横に退いて、彼のお母さんを紹介した。 急に守ってくれるものがなくなり、不安になる。 「……お邪魔しています、中野弘通です」 確か、挨拶ってこんなものだよな? 粗相はまだ、してない?よね? 僕が恐る恐る渋谷のお母さんを見ていると、渋谷のお母さんはケラケラと笑い出した。 「やば、めっちゃ礼儀正しいじゃん、うちの翔には勿体無いwみっちーて彼氏でしょ?翔の」 へ?みっちーて誰のことだ? 僕、しかいない、よね……? これは、うなづいていいのか? なんだか、こんなに早く紹介されしかもあっさりと受け入れられるとは思っていなくて、現実味がない。 もしかしたら夢なのかもしれない。 「そ、恋人の中野。てかみっちーてなんだそれ?」 渋谷が思ってたことを全て代弁してくれた。 ……渋谷が桃子ちゃんのカマかけ以後、どんどん、カッコよくなっていく。 「そーなの?合意?」 お母さんのそのセリフに思わず食い気味に答えてしまった。 「っはい、勿論」 「なーんだ、よかった。じゃ、ごゆっくり〜」 そこではたと渋谷が気が付いて彼のお母さんに疑問に思ってたことを聞いた。 「あれ、今日帰ってこないんじゃねーの?」 確かに、家にいないって、聞いてた。 「えぇ?あーー忘れ物しちゃって、とったらもうすぐとんぼ返り…ってやばぁい、もう行かなきゃ間に合わない!じゃあね!」 そんなことを言いながら、お母さんはせわしなく奥に行きバタバタと帰ってきてあっという間に出て行った。 キィー、バタンッ ドアの閉まる音を聞いてから、僕と渋谷は思わず顔を見合わせた。 ……なんだったんだろう、今の。 多分、この気持ちはお互い口にせずとも伝わっている自信がある。 微妙な沈黙を破ったのは渋谷だった。 「なんかごめん、部屋行こうぜ」 「……うん」 手を洗い、渋谷の部屋に案内された。
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