イチャイチャ日和と誕生日

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渋谷の部屋は少し雑然としていて、でも汚すぎず綺麗すぎず、気取らない感じがしてちょっと嬉しかった。 あまりにも気取られるより、少しさらけ出してくれた方が、嬉しい。 「適当に座ってよ」 そう言いつつ、渋谷がベッドに腰掛けて、隣をポンポンとやる。 ……そこに、座ってもいいってこと? 結構、その距離が近くて、座るのにちょっと躊躇う。 嬉しいから、ドキドキするから、余計に、躊躇いが生まれる。 それを渋谷は察したようで、渋谷が立ち上がって僕を抱きすくめた。 ……甘い。 耳元でそっと囁かれるコトバが、余計に空気を甘くする。 「ふーん、隣、座ってくれないんだ?」 ……僕のことを殺す気か、こいつ。 声が、低くて、ちょっと掠れてて、耳にクる。 なんだったら、勃ちそう。 「……座る」 「ん。よかった」 そういうとあっさりと渋谷は離れ、また座り直して横をポンポンした。 もしかしてこいつ、これがやりたかったのでは? そう思ってよく見てみると、ちょっと照れているようだった。 流石にもう言い逃れはできないし、僕はそっと渋谷の隣に腰を下ろした。 渋谷との距離は2センチ。 近くて遠くて、一番ドキドキして、丁度いい距離。 0センチは、ドキドキしすぎて、無理。 1センチはその間が寂しい。 思わずニヤけないように、顔に力を入れる。 それでも嬉しいのは隠せなくって、体を渋谷の方にほんの少し傾ける。 渋谷が、くっと言うのが聞こえた。 反応が気になって、顔を覗き込む。 思いの外、距離が近くて、心臓が跳ねる。 至近距離で見る渋谷の完熟トマト顔負けの真っ赤な顔。 渋谷が慌てたように目を逸らして立ち上がる。 ふっとできた隙間と流れる空気にさみしさを覚える。 「あ、お、俺、なんか取ってくるわ!」 渋谷がそう言って逃げ出す。 なんとなく、脱力して後ろに倒れ込む。 ぼふっと埋もれた布団からいい匂いがして、離れがたい。 安心、する。 そのまま目を瞑ると、余計にいい匂いが強調される。 ……そのまま滑るように眠りに落ちた。
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