イチャイチャ日和と誕生日

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6時半を回って、流石にそろそろお暇しようと思った。 ちなみに今の今まで渋谷イチオシのマンガを熱烈に紹介されてた笑。 送るよ、の言葉に甘えて駅まで送ってもらうことになった。 玄関のドアを開けると、 「うわ!」 「きゃぁーーっ」 桃子ちゃんと衝突した。 顔が真っ赤だ。 「なにやってんの」 後ろから顔をのぞかせたのは、見覚えのあるような気のする顔だった。 うちの学校の制服を着ている。 「上野じゃん」 後ろから来た渋谷が声をかける。 「あれ、何、渋谷と……中野?」 「あー、そう、何、デートの帰り?」 渋谷が聞くと、上野が照れたように笑った。 若干白いかなと思わせる肌と、サラサラで真っ黒な髪が綺麗なイケメンだ。 初めてまじまじと見たけれど、確かに桃子ちゃんの言う通り格好いい。 ……まあ、圧倒的に渋谷の方が格好いいけどね。 でも、栗色の髪の桃子ちゃんと並ぶと、本当にお似合いだ。 「そうなんだよ、制服デートって言って聞かないから」 「だって、上野くんの制服見たかったの〜せっかく同じ学校なのに、会えないし見れないから……」 桃子ちゃんが拗ねたように言う。 それを見た上野が、桃子ちゃんのほっぺたをぎゅーと両手で覆った。 桃子ちゃんと目を合わせた上野が口を開く。 「ごめんな。でも、誰に頼まれても俺は行きたくないときに学校には行きたくない」 「ひってふ(知ってる)」 桃子ちゃんが答えると、上野が手を離した。 「だから好きなの」 「……っほんと、いい奴だな……」 桃子ちゃんたちのお邪魔にならないように、この辺で僕らはそっと立ち去った。あとで、メッセージしよっと。 桃子ちゃんたちのラブラブっぷりにちょっと当てられた帰り道、僕らの口数は少なくなった。 「……すげぇ、ラブラブ」 「ね」 地面に当たる二人分の靴音が響く。 「……マジでさ、本気の話。将来、一緒に住もうぜ」 「うん」 そうなるといいなと言う希望を込めて素直にうなづく。 「でさ、そんなに豊かじゃなくてもさ、ずっと二人でいられればそれで良い、て思う」 「……うん」 そうだな。 ずっと、二人でたわいもない日々が作れたらいいな。 今が、特別な日じゃなくて。 今が、特別な毎日のはじまりであるように。 二人で、どんな家に住みたいかだとか、そんなちょっと大事なたわいもない話をしながら駅に向かい、別れた。 帰りの電車、僕はずっと窓の外の光を見ていた。 ビルの明かり、マンションの明かり。家の明かり。 それぞれ違うけれど、どの光のもとにも、必ず人がいるんだなぁと思いながら。
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