ハッピーエンドの定義(最終話)*

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……あっという間だよね、ほんと。 時が経つのって。 ほとんどなにもしないまま、土曜日が、やってきました。 母親に持たされた手土産片手に、待ち合わせの駅に向かう。 見慣れたシルエットにときめきながら、声をかける。 「ごめん、待った?」 「ううん、今来たところ」 ……はぁ、幸せ。 こういうやりとりってすごくドキドキするよね。 「あ、中野。今日、親が旅行で、桃子が友達とお泊まり会だって」 ……まじか。 確実に、するやつだよね? わざとそう言って僕のことを煽ったのか、渋谷がにやっと笑ってみせた。 ……なにこれ。 どんな顔も似合うのとかずるくない? 惚れちゃうじゃんか。 もう惚れてるけど! 「そうなんだ」 「そ、楽しみだね?」 あああ、やめてくれ、メンタルがもたない! 心臓がもう騒がしくてやってられないのですが!? 好きが止まらないって言葉、今ならすごくその言いたいことがわかるよ。 「……照れた?」 真っ赤な頰をした渋谷が聞いてくる。 いや、照れてるけど、わかりやすく照れてるのは渋谷でしょ。 「渋谷の方が照れてるじゃん」 「そりゃね。可愛い好きな人と一緒にいるんだから」 あああああーー!! いつか、こいつに殺される。 キュン死。 否が応でも頰に熱が集まる。 可愛いって、僕に使う言葉じゃないぞ。 絶対。 可愛げのないことを思いながら、照れるし、もっと好きになってしまう。 そうこうしているうちに、渋谷の家に着いた。
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