ハッピーエンドの定義(最終話)*

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「よーこそ、我が家へ〜」 「ハイハイ」 玄関の前でばばーんとポーズを決める渋谷を容赦なくスルーして、お邪魔しまーす、と上がり込む。 恋人だって、容赦はしないのだ。ツッコミとあしらいは。 「も〜冷たいなぁー」 そう言いつつ、べったりとへばりついてくる。 外にいる時は一応はあれで自粛しているらしいが、付き合うまでここまでベタベタしてくるとは思わなかった。 友達にはしないべたべた。 ……嬉しいに決まってるじゃんか。 いや、外ではもう少し自粛していただきたいが。 僕だけ、だから。 後ろから抱きつかれたままの姿勢のまま、渋谷の部屋に入る。 ベッドに腰掛けようと、ヨタヨタと進む。 が、 「うわ」 バランスを崩して、二人してベッドに倒れ込んだ。 痛い。 渋谷の無事を確認しようと振り返ると、真っ赤な顔をした渋谷と目があった。 すると渋谷が慌てたように、目をそらしながら言った。 「ごめん、えっと、そんなつもりじゃない、からっ」 ……おいおい、女子かよ。 じゃなくて、意識しすぎだろ。 でもやっぱり、そんなつもりじゃない、のかなぁ。 「そうなの?…………期待した」 わざと煽った。 これで、断られたら、かなりしんどいけど。
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