ハッピーエンドの定義(最終話)*

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「英語を教えてくれるところ。なんだかんだ言って構ってくれて、優しいところ。面白いところ。可愛いところ。たまに素直になるところ。もちもちしてそうなところ。笑顔が可愛いところ。俺のことが好きなところ。数学ができないって泣きついてくるところ。ツッコミが激しめところ。泣き虫なところ。中野なところ。中野の全部が好きだよ。怒っても可愛いし、驚いた時に目を目いっぱい見開くところも好き。……これでどう?」 よくもまぁ、スラスラと出てくるなぁ。 もはや感心しつつその一言一言に嬉しさが込み上げて、涙がこぼれる。嬉し涙だから、いいでしょ。悲しい涙は止まったよ。 「ね、中野。部屋入れてよ。ぎゅってしたい」 「中野なところって、なんだし」 「そういう所かな?」 可愛げのない口を聞いたのに柔らかく返されてしまう。 「ね、入れてよ」 カチャリ。 鍵を開ける。 座り込んだまま。 戸が空いて渋谷が入ってくる。 「あれ、え、いなくね?え?」 混乱してる渋谷に笑ってしまう。 「っふ」 「あーそんなとこに!!」 振り返って渋谷が言う。 そのままこっちを見た渋谷が慌てだした。 「え、ちょ、そのままなの?!寒いだろ!この時期!何してんの!!立って、ほら服着て!で、布団に入って!!!」 ……おかんかよ。 そう突っ込むまもなく服を手渡され、ちらっと見た渋谷はローションとかをテキパキと机の引き出しに放り込んでいた。……申し訳なさが募る。 「ごめん」 「まだ言うの、気にすんなって」 そんなこと言われたって気になるよ。 「もしまたしたいなら、またチャレンジしよ、な?」 そう言いつつ渋谷が抱きしめてくれる。 あったかい。 そっか、寒かったのか……。 冷えてたことにいたら気がつく。 「……このままでいて」 「うん」 おねだりに快く答えてくれて、部屋の中抱き合って熱を分けてもらう。 渋谷が口を開く。 「あのさ、エロいことって絶対しなきゃいけないわけじゃないから、気張らなくていいんだからな?そういうことしなくたって恋人だし、俺は幸せだよ?一緒にいられれば」 「……っ」 すとん、と言葉が落ちてくる。 そっか、しなくてもいいのか。 出来なくても、いいのか。 そうだよな、好きでいればいいんだよな。 背中に回された手があやす様にゆったりと僕の背を撫でる。 落ち着く。 温かさが伝わって、二人、同じ温度になる。 「ありがと……」 「うん」
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