ちょっと振り返る。

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「ひろみちー」 翔がベッタリとくっついてくる。 それを感じながら翔の好きな映画を見るともなしに眺める。興味はない。 でも、いわゆるお家デート。 まぁ、同棲して何年も経ってるけど。 「なぁに、翔」 「なんでもない」 何だこの会話。 そう思いつつも幸せだと思って、顔は綻ぶ。 バレないけど。 彼ソファ、してもらってるから……。 ふふふ、いいだろう。 硬いけど、あったかくて、最高に落ち着く。 ふと、昔のことを懐かしく思い出した。 まだ、渋谷と呼んでいた頃のこと。 僕は付き合いだした当初、めちゃくちゃに焦っていた。自分でも思い返すと笑えるくらい。 恋人なら、セックスしなきゃいけない。 なんてことに囚われて、セックスすることに必死だった。 興味もあったし、それが普通だと思っていた。 今は、セックスなんかしなくたって愛し合えることも、セックスが愛の証明でないこともわかっている。 ふ、と思わず笑みを零すと頭上から翔が聞いてくる。 「今面白いとこだった?」 「いや、思い出しちゃって」 「?」 きょとん、としつつもヒーローの派手なアクションに目を奪われている翔を愛おしく思いながら、放っておく。 今は、映画見てるわけだし。 思わず、笑ってしまったのは、初めてのあの日のあと、結局挿入までたどり着くのにまる2週間かかったってことを思い出したからだ。 あんなに焦って煽っておいて、2週間である。我ながら酷な恋人だと思う。まぁ、素股とかはガンガンしたけど笑。 ふはははは。 懐かしいなぁ。あの頃はめちゃくちゃ青かった。 喘ぎ声なんかも必死で練習したよな笑。 功を奏したのかなんなのか、今や抑える方が大変なんだけどね。……翔のやつ、どんどん上手くなるし。 そんな風にぼーっとしているうちに、エンドロールになる。 「弘道、風呂先入りたい?明日早いんでしょ」 あの頃、16だった僕らももう27だった。立派な社会人である。 「う……ん、あ、一緒に入る?」 深く考えずに誘う。 「っは?!え、あ、いやまた今度にするわ……」 「……そ?」 「うん、ゆっくりしといで」 お言葉に甘えて、先に入ることにする。 考えたいこともあったし、ついいつものノリで誘ってしまったけど、本当は1人出入りたかった。
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