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ちゃぽんと湯が音を立てる。
たっぷりと湯をはった浴槽に肩まで沈み込み、目を瞑る。
最近、叶えたい夢ができた。
もっと前から、本当はずっと叶えたい夢だったのかもしれない。
自覚して、実現までの道のりを思い浮かべられるようになったのが、最近と言うだけで。
僕の夢は、家族をつくることだ。
家族。
セクシャルマイノリティじゃなきゃ、父がいて母がいて子がいる、というようなものなんだろうか。
じゃあ、セクシャルマイノリティなら、子供はいらないか、家族はいらないかと言ったら、そうじゃないんだと思う。
僕は、家族が欲しい。
幸せな、家庭を作りたい。
ここでオメガバースなら。
よし、子作りするぞ〜♡はいできました!
みたいな(もちろんなんやかんやはあるけど)感じで出来てしまう、家族。
でも、現実じゃそうはいかない。
男同士で子供を作ることは直接にはできない。誰かを通しての代理母出産や、里親制度を使ったりしなければならない。
夫婦は、血が繋がっていなくても家族になれる。
子はかすがいと言うけれど。
そうじゃなくて、子供も血が繋がってなくたって家族になれるんじゃないかな。
誰も血が繋がってなくても、互いに愛し合ってる、家族がつくりたい。
子供が、欲しい。
僕の、理想は、夢は、
翔と、子供と、幸せな家族をつくることだ。
それをはっきりと自覚したのは、本当にココ最近だった。翔に言うかは、まだ悩んでいて、話したいし、一緒に夢を追って欲しいけれど、反対されて、もしかしたら縁を切られたらと思うと怖くて話せていない。
今はどんどん変わってきているけれど、昔は結婚し子供を作ることが唯一の幸せだと考えられてきていた。個人のイメージだけどさ。
今は、その考え方は古いし、それ以外の幸せを求めても良くなってきている。受け入れてもらいやすくなっている。
でも、まだダメなんだよな。まだ、ゲイが子供を欲しがる感覚を理解してくれなかったり知らなかったりする人は多いし、受け入れてくれる人は少ない。勿論、全員子供が欲しいわけじゃない。それはセクシャルマイノリティじゃなくたってそうだと思うけど。
それでも僕は、子供が欲しいと思うし、翔と家族をつくりたい。
理想論すぎるだろうか。
でも、追いかけたくてたまらない。
できれば翔と、この近くて遠い夢を追いたい。そう、思っている。
そんなご大層なことを考えていたら、完全にのぼせてしまった。情けないことに立てない。本当は嫌だが……仕方ない。極めて情けないけど。
「しょーう」
愛しい人の名を叫ぶ。
尚、ロマンティックな場面ではない。
「なにー?どうした?シャンプー切れてたっけ?」
完全に夫婦の会話である笑。
「違うー!助けて!!」
「はぁっ!?」
遠かった声がドタバタと言う音と共に近づいてくる。
ガラッ
「っは、どうした!?」
……イケメンに磨きがかかったんじゃなかろうか。今日観た映画のヒーローより何億倍か格好よく見える。
そんなイケメンな僕の恋人に、僕は情けなく白状した。
「すまん、のぼせた。立てない……」
助けて……と手を伸ばすと呆れたような顔をされた。
「分かった。もう洗ったの?」
「まだぁ……」
「……俺も入るわ」
結局、渋谷と入り、なんやかやもしたので寝るのは遅くなった。
色々と真っ赤になった夜であった。
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