もやもやり。

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……僕は、実の親にカミングアウトせずに高校卒業とともに家を出ている。 BLだと、あっさりとカミングアウトするけれど、僕は実の親に知られるのか怖くて、否定されるのが怖くて、結局言わずじまいなまま、ここにいる。言わなくてもいいんじゃないかな、とも思っている。言った方が楽になるのはわかるけど、言ってしまうと言う側は楽になっても言われた側は逆に色々と抱え込むことになるのだ。 ……僕は、言えなかった。 渋谷の家族にはとうの昔に知られているけど、僕の家族には言ったことは無い。翔を一度だけ実家に連れて行ったことがある。友人と紹介する、あの翔と親への罪悪感と、モヤモヤした辛さは、耐えがたかった。それでも、恋人だと言うのよりはマシだと思った。そんな僕を、酷いやつだという人は沢山いるだろうけど、それでもいいから、言うのは怖いし、言いたくない。 夢を叶えようと思う度に、自分の親のことが頭をよぎる。 家族を欲するのに、セクシャリティを実の親には隠したまま死のうとさえ思っている。 これでいいのか。そもそも子供を、自分が欲しいと言っていいのか。 翔が、僕と同じ夢を見てくれるか。 たくさん、悩むことはある。 それでも、どうしても叶えたいから、言うことにした。翔に、子供が欲しいと。家族になってくれと。……プロポーズみたいで、恥ずかしいけど。 僕らは恋人の死に目には会えないかもしれないし、同じ墓には入れないだろうと思う。そして互いの緊急連絡先には、なれない。 結婚できないから。 そんなことはわかってる。 そのままでいる気は無い。 ……僕は、家族が欲しいよ。 幸せを、つくりたいんだ。 翔と一緒に。
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