予想外に。

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永遠に続くかと思われた沈黙は、案外あっさりと破られた。 「え、マジで!?持てんの?てかマジで?え??ちょっと待って混乱してる」 今の「マジで?」は「本気?」という意味だろうか。 だとしたら本気だ。 「え、どういうこと?産めるの?」 「なわけあるか!!」 思わず全力で突っ込んでしまった。 ここは落ち着いて、返事すべきだったのに。 「そ、そうか、そうだよな……??」 「うん、ええと説明すると、」 翔がうんうんと頷く。 聞いてくれるらしくて、ほっとする。 「日本には、里親制度ってのがあって、施設で育ってる子を預かって育てることができるんだよね」 「え、そんなのあるのか?」 「あるよ」 「……知らなかった。それ、ゲイカップルでもいけんの?」 「うん。前例はとても少ないし、反対する人ももちろん多いけれど、大丈夫。ちなみに条件はあるけど独り身でも大丈夫みたい」 「カップルでも……?」 「そう」 「え、すげーな」 翔が、早速スマホを出して検索してくれる。 表示されたサイトには、事情があって親元で暮らすことができないこどもを、一時的あるいは継続的に自身の家庭に預かり養育することだと書かれている。 「でしょ、僕らでも、親になれるって、その……すごくない?」 「そうだね」 「さっきも言ったみたいに、僕は、渋谷と、その……家族を作りたいんだ」 「うん」 翔に見つめられて、その先を、告げる。 「……翔、僕と、家族を作ってくれたりしない?」 「……ごめん、ちょっと保留でいいかな」 翔の返事に、すっと腹の底が冷えた。
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