じっくりコトコト。

2/3
前へ
/283ページ
次へ
最近、翔の成長を感じる。 昔は、何も考えずに飛びついてくる感じだったのに。 じっくり考えたい、と言われた。 それを聞いて、また僕は焦ってたんだなと気付かされた。 気が急いてついつい先を急いでしまう。 その癖は、あまり変わってないみたいで、翔の進化と比べてちょっと落ち込む。 とはいえ、落ち込んでいる暇はない。 翔は、じっくり考えたいと、そして聞きたいことがあると言っていた。 じっくりコトコト、あったかポタージュ……いや、脱線するな。 コーンポタージュが恋しくなってしまった。 そんなことはともかく。 何を聞かれるんだろう、一応入念に調べたつもりだけど、僕だってそんなに詳しくない。 もんもんもんとしながらいい加減見慣れた帰り道を歩く。 引っ越してから何年経つんだろう。 ガチャ 「ただいまー……」 玄関を開けると、シンと静まり返っていて、そういえば電気が着いていなかったと思い出す。 まだ、帰っていないようだった。 今日はいつもより早く上がれてよかったなと思いつつ夕飯の用意を始める。 今日は僕が作ろう。 ……そしたら、帰ってきたらキスしてもらお。 ちょっと楽しくなってきて、鼻歌なんか歌いながら料理をする。 今日は……まぁ、肉じゃがでいいかな。 この間じゃがいも安かったから沢山買っちゃったし。 だから多分昨日はカレーだったんだろうし。 いい具合に肉じゃがが出来上がったところで翔が帰宅した。 「おかえりー今ご飯できたとこ」 「ただいま、マジか、サンキュ!」 そう言いつつ翔が手洗いうがいを済ませ、僕のそばに来る。 「なに?」 菜箸を手に振り返ると翔が僕にキスをした。 唇を離し目を合わせてニコッと囁かれた。 「お礼」 あああもう!! 僕から言う前に!してくるなんてずるいじゃないか! 真っ赤にならざるを得なくなっちゃって、頬が熱い。 「かーわい、もっかいする?」 危うく頷きそうになる。 「なわけ!飯にするぞ」 早く着替えるようにその背をキッチンから押し出す。 ……あのまま、またキスされてたらその先までしたくなるじゃないか。 好きを噛み締めながら2人分の器に2人分のご飯を盛り付け、テーブルに並べる。 準備は完璧。 向かい合わせに着替えた翔が腰掛けて、夕飯スタート。 「「いただきます」」 珍しくふたり声が揃って、嬉しくなって笑ってしまう。 「うま、じゃがいもいい感じだね」 「マジ?……あ、ほんとだ」 ほくほくと柔らかいじゃがいもが美味しい。 褒められたからか、余計に美味しく感じる。 我ながら単純。でも幸せだからいいのだ。 たわいもない話をしながら完食し、2人で片付ける。 「弘通、話、ベッドでしない?」 最後の食器を仕舞い終えると翔が言った。 僕はちょっと不思議に思いながらも頷く。 なぜベッドなんだろう。 翔にそう聞くと、案外ちゃんとした返事が返ってきた。 「テーブルで向かい合ってるとちょっとお互い固くなるし、距離遠くなるじゃん。ゆっくりしながら話した方がいいかなって」 聞いて、納得する。 真面目な話ではあるけれど、真面目に話し合いっぽくするより、いい結果が生まれそうだな、と思った。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1539人が本棚に入れています
本棚に追加