おまけ2・渋谷は同棲がしたい

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「あ、翔?」 「うん」 ゴソゴソと動く気配が電話越しにして、イヤホン越しでも、同じ時を共有している幸せを感じる。 「……あー、あの、ええと」 「うん」 「あのさ、親に、その……カミングアウトとかする気なくて」 は?? 何の話? ……カミングアウト…って、アレだよな。 ゲイですとかって人に言うやつだよな。 うんうん。え?? 「……友達とシェアって言ったら、会ってみたいって言われて」 しばらく弘通が黙る。 もぞもぞと動く生活音だけがする。 「だからその、友達として、うちに来てくれない?……その、ごめん」 ……。 あーっ、やっとわかったわ。 俺を友達として紹介することに色々考えてたんだ。 な、そうだろ? 「いいよ?全然。いつ行けばいい?」 さびしいけど。 そういうのは、無理にするもんじゃないってくらいはいくら俺でもわかってるし、弘通がしたくないって言うならそれはそれでいいんじゃない?って思うし。 「へ?」 「はは、だから、行くよ?いつ?」 予想外、というように驚いた弘通の声が電波越しにする。 今、可愛い顔してるんだろうな。 絶対。 「……っ、ありがと、う……」 緊張がとけて、一気に緩んだ弘通の声にもどかしくなる。 会いたい。 今、そばで抱きしめたい。 背を、さすってやりたい。 「泣くなって……」 困るんだ。 電話越しに好きなやつに泣かれちゃ。 こっちは何も出来ないままなんだから。 なにかしてやりたくても出来ないじゃんか。 まじで、今度会ったら3割増でべったりくっついてやる。 満更でないのを俺はわかってるんだから。 結局の話、次の日曜になった。 勉強すべきだろうから、学校帰りの時間に会社を早退して会ってくれるらしい。 愛されてるよな、と思う。 そして今、それがあと三日後の今週末に迫っているわけである。 やばい。 まじやばい笑。
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