おまけ3 久しぶりのデート

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「あれ、早いね?待った?」 翔が来た。 まるできたことあるかのように迷いない足取りで、イケメンってほんとになんでも出来ちゃうんだなあと感心する。 ここに来るのは翔も僕も初めてだ。 「ううん、今来たとこ」 「そ?ならよかった。じゃあ行こっか」 「うん」 余裕だなぁ。 相変わらずキラキラな笑顔を僕にプレゼントしてくれる。 久しぶりに見た笑顔が、あまりにもキラキラして見えて、泣きそうになる。 泣かないけどね。 歩き出すと、翔がすっと僕の手に翔の手を絡めてきた。 恋人繋ぎ、だ。 ……え?恋人繋ぎ?? 「ダメだってば」 慌てて離そうとすると、翔に不思議そうな顔をされてしまう。 「なんで?」 「なんでって!」 人が、いる…から……。 「恋人同士が手を繋いだって誰の迷惑にもならないよ?」 にっこりと言われて、思わず押し黙る。 確かに、そうなのかもしれない。 「俺はさ、堂々としてりゃいいって思うよ。人に迷惑かかんないならね」 「……そう、だね」 「うん笑。それに俺な弘通と手、繋ぎたいから笑」 なっ。 ほんとに、こいつは、もう……。 これ以上惚れさせてくれるなよ。 どこまで、格好いいんだよ、ほんと。 ……好きだなぁ。 これ、同棲なんてしたらどうなっちゃうんだろ。翔が格好よすぎて溶けちゃうかもしれない笑。 「じゃ、繋いでいよ」 「おう、じゃあ行こっか」 今日は、翔としっかり手を繋いで、水族館をデートする。 できたら、これからも。 そうできたらいいな。 パンフレットをさらっと見ただけでしっかりとエスコートしてくれる翔や、タコを大はしゃぎで指さす翔を見て、思わず楽しくなって2人でぴったりと身を寄せ合って笑ってしまう。繋がっている手が温かくて、そこからずっと幸せが流れ込んできているような感覚。 触れ合う肩が喜びの表れのようで、頬が緩む。 帰り道、デートの終わりがあまりにも寂しい。 「また、デートしてくれる?」 ふとした不安をぶつけると、笑顔が返ってくる。その頬が赤い。 「当たり前じゃん!絶対な!!なんなら明日でもいいよ笑」 「ほんと?」 明日って笑。 幸せで浮かぶ笑みに身を委ねる。 「もちろん。あと、ダブルデートもしようぜ?桃子に声掛けた?」 「うん、遊園地とかどう?って言われた」 「いいじゃん」 「ね、楽しみ」 しばし、2人で見つめ合う。 何もしてないこういう時間が、小さな幸せ。 「……弘通」 いつになく真剣な翔の顔にドキドキする。 「愛してる。またデートしよう。……同棲、楽しみだね」 「……っ、うん!」 綺麗な王子様な笑顔に、やられる。 格好よくて、キラキラで、僕のためだけの笑顔。 心臓が痛いほど騒がしくて、胸がぎゅうっとする。 「……僕も、愛してる」 「うん」 ……駅に入り、電車に乗る。途中までは、同じ電車。 名残惜しげに見つめられて空気が溶けそうに甘くて、すっかり日の暮れかけた中を走る電車の中で、手を繋ぐ。 これくらいなら、いいよね。 別れる駅で、手を振りあう。 「メッセージ、送る」 翔のその言葉に頷くと電車のドアがしまった。 流れていく翔を見送って、自分の帰り道をたどる。 今年は、いや、これからも、沢山デートするんだ。 ……次は、どこがいいかな。 fin.
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