おまけ4 ダブルデート!!

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え、ちょっと待ってくれ。 これはまずいぞ。 流石に。 「しょ、翔っ」 「ん?」 慌てて名を呼ぶと翔が僕を見る。 「ごめ、せめてもう少しゆっくりにして…!」 必死に頼むと、翔が目を丸くする。 「え?…………もしかして、苦手だったりする?」 「……する」 観念して正直に答えると、回すのを止めようとしてくれる。 ありがたい。 今、視界の端でありえない速度で大はしゃぎで回す桃子ちゃんと上野が見えた。余計にクラッときた。 見てはいけなかったなと後悔しつつ、まだチラチラと見える桃子ちゃんたちを意識しないように翔を見る。 「え、まじで!?え、ちょ、もっと早く言ったら乗るの止めようとか言えたのに」 「ごめん……」 「え、まじで大丈夫?」 「だいじょうぶ…」 声に出してみると、思ってたより元気のない声になっていて、自分でも慌ててしまう。 初っ端から迷惑とかかけたくなかったのに。 地獄のような時間が終わり、相変わらず鳴り続けるハッピーな音楽をグラグラとした思考でぼんやりと聞く。 完全に、弱り果てていた。 ただ、しばらくすれば元のようにぴんしゃんとする。 だから、この後に関しては心配はないんだけど……。 目下、カップからの脱出が問題なのである。 「弘通?……立てそう?」 あまりにも立ち上がる気配のない僕に翔が声をかけてくれる。 「……ごめん、無理そう…」 正直に答えると、翔が眉を寄せる。 「ほんとごめん……」 そう言うと、さらに眉を顰められてしまう。 どうしよう、空気を悪くする気じゃなかったんだけど……。 「どうしたの?」 桃子ちゃんたちもやってきてしまう。 立たなきゃ。 そうは思うのだけれど、力が入らない。 「……」 すると、ずっと無言で立っていた翔がいきなり僕の座っている膝の裏に手を差し込んでくる。 え? これは、もしかして……? 「ぃよっと」 「きゃー翔ったらイケメン〜」 桃子ちゃんがきゃあっと盛り上がる声と、体の浮いた感覚でやはりとそうだとわかる。 お姫様抱っこ、されてしまっていた。 「ぇ、ちょ、いいって」 「いや、よくないでしょ」 まだ立てないっしょ?と言われてしまい、それはそうだけどとおし黙る。 恥ずかしさと、嬉しさと、ドキドキが止まらない。 周囲からの視線が痛い。 でも、それよりも嬉しさやドキドキが勝ってしまって、翔の首に手を回してお姫様抱っこを堪能する。 翔の胸に耳を寄せ、心音を聞く。 どくどくと脈打つ鼓動が、心地よい。 束の間の特別を思う存分に味わう。
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