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待ち合わせた駅を通り過ぎ、行きとは反対の電車に乗る。
幸運にも全員、途中までは同じ電車だった。
だから同じように電車に揺られながら日の暮れた空を眺める。
紺になる前の青い空。
わかるかな、昼間の水色の空じゃなくて、日の暮れた後のわずかな時間だけ見られるあの青さ。
あれがだんだんと紫になりやがて紺になる様をただ四人で黙って眺めていた。
楽しかった時間の後の、空白の時間。
でもやがて、上野が降りる駅がやってきた。
「……えと」
「うん、またデートしようぜ?」
桃子ちゃんがおずおずと切り出すと被せるように上野が返した。
こくりと頷く桃子ちゃん。
いつもはうるさいくらいの桃子ちゃんがしんみりとしていて、今生の別れってわけじゃなくても、やっぱり寂しいよなと共感する。
車内放送が告げる上野の降りる駅名。
ドアが開き、上野が手をひらりと振った。
「じゃ、また」
「うんっ、ばいばい!!」
笑顔で手を振り返す桃子ちゃん。
僕と翔も手をあげて応える。
「あーー、終わっちゃうんだな……」
センチメンタルな気分は同じなんだろうな。
桃子ちゃんの呟きに思わず頷く。
「また、ダブルデートしような、楽しかった」
翔の台詞に頷いていると、あるものが目に入った。
拾い上げて桃子ちゃんに手渡す。
「これ、上野のじゃない?」
「ほんとだ!上野くんのハンカチじゃん!」
「確認してみたら?」
そう促すとすかさずメッセージを送る桃子ちゃん。
返信が返ってきたようで画面を見つめていた顔がパッと明るくなる。
「明日会えないかって!」
よかったねと翔と二人で祝福したり服はどうしようかと悩む桃子ちゃんに付き合っているうちに僕が降りる駅がきた。
立ち上がってドアに向かいながら桃子ちゃんとさよならのハイタッチを交わし、翔と手を振り合う。
翔の横を通り過ぎ、電車を降りる直前に翔が何かをつぶやいた。
その内容をやっとこさ理解したときには電車のドアは閉まっていて、一人ホームに悶え立つ羽目になった。
「弘通、今日はありがとう、愛してるよ」
さらっと言ってるけど電車だぞ!?
ねえ!?
今夜はドキドキしたまんまで、なかなか寝られなさそう。
メッセージを開き、一言だけ送る。
『僕も』
fin.
またしても長らくお付き合い頂きましてありがとうございました。
いかがだったでしょうか。
楽しんでいただけたら幸いです。
10000スターのお礼にオメガバースパロをやりたいななんて思っているのですが、どうでしょう?(もし大丈夫そうでしたらお手数ですが、期待のページスタンプを押していただけると参考になり嬉しいです)
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