おまけ5 キャンセル

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「はーーい、おはよーございまーーす」 ひそひそと小声で話してくる桃子ちゃん。 「動画配信者の朝のドッキリじゃん……」 思わず突っ込むとにんまりと笑ってピースされた。 「はい、今日はッ翔の彼氏さんが翔を看病しに来ています!無事翔は回復するのでしょうか……ッ」 鍵をマイクに見立てて話している。その中で彼氏、と紹介されて、嬉しくなって照れる。 「……ちゃんと、メッセで報告してよね。……翔を、よろしくお願いします」 ガチャリと鍵を開けてくれながら桃子ちゃんが微笑んだ。 ごめんね、と謝る桃子ちゃんにありがとうと告げてお邪魔しますとつぶやいた。 バタンと戸が閉まる音を聞き、ふうと息をついた。 結局、まだ既読付いてないんだよな……。 前に行ったことがあるから、翔の部屋はわかる。 靴を脱ぎ端に揃えて置いた。 手を洗い、翔の部屋の前に行く。 息を吸って、また吐いた。 コン、コン。 遠慮がちに戸を叩く。 一応、ね。 「入るね」 お邪魔しまーすと声になるかならないかの声量でつぶやいた。 戸をそっと開けて、中を覗く。 明るんだ部屋を見回す。 ……え? あれ? なんで? 翔がいない。 はっ!? 騙した!?とかではないと思うし、えぇ!? 混乱したまま、もう一度、部屋にしっかりと足を踏み入れて見回す。 いない。 ええ?!!!?! どっかで倒れてたりしないだろうね!? それとも本当はよその誰かとデートとか…いや、それはないわ。浮気なら別の日に予定入れた方がやりやすいだろ。それにするわけないだろうし!? 慌てて、人がくるとは思っていなかったであろう乱雑な雰囲気の家の中を覗き込みながら歩く。 リビングで人の足を見つけ、ひっと息を飲んだ。 し、死んではないよな!?!?
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