吉と出るか凶と出るか

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「……かの……おーい、中野。中野ってば」 「へ?」 目の前に。 渋谷がいた。 「なあさっき呼んだ?」 「え……?」 「いや呼ばれた気がしてさー」 気がついていた? だったらなんで……。 ああそうか。そうだよな。 やっぱり僕は青山くんには勝てっこないんだ。 気がついてたら、後でな、くらい言ってくれてもいいじゃないか。 あはは。 やっぱりブスじゃ、いや、僕なんかじゃダメなんだな。 「いや……呼んでないよ」 「え、マジ?」 「うん」 「そっかー」 そう言いながら離れていく。 いいや、あの声は僕だったとは言われなかった。 期待する方も期待する方だけど。 その後の記憶は特にないままフラフラと家についた。 気がつくと機会的に飯は食べていたようで空腹感はない。 もしかしたら食べていないのかもしれないけれど。 どのみち食欲はなかっただろう。
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