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「遅かったな、どうした?ってうわっちょっ何泣いてんの?」
渋谷が、待っててくれた。
情けない泣き顔と全力疾走の後の荒い呼吸のまま、僕は膝から崩れおちた。
1時間。待っててくれた。
連絡先なんかお互い知らなかったし、こない可能性だって十分にあったはずなのに。
「ごめん、ごめん……ごめんなさっ…ごめっ」
「え、いいよいーよ。ちゃんと来たし」
「ごめんっほん、とにっ、ご、めんなさっ」
「いいって、いったん落ち着いて?」
もう嬉しくてありがたくて情けなくて申し訳なくて、涙が止まらない。
なのに渋谷は泣き止むのを待っててくれて。
背中、さすってくれて。
好きで、たまらないのに、こんな自分で申し訳なくてならなかった。
結局、駅前で大泣きして渋谷に恥をかかせて、服も顔もみんなぐちゃぐちゃで。
渋谷が、もっとすごく好きになった。
そして、申し訳なくて、惨めでたまらなくなった。
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