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「そろそろ落ち着いた?」
「……うん」
そんなさりげない一言にも心を踊らされる。
好きにならざるをえないくらい格好良い渋谷が好きでたまらない。
「じゃ、ネズミーランド行くか」
「え?」
もう飯だけで解散かと思ってた。
なのにまだ、一緒に行ってくれる気、あるんだ。
どこまで人がいいんだろ。
イケメンすぎる。
「え、もしかして行きたくなかった?なら良いけど」
「え、あ、いや、行きたい、けど」
「あそこ結構夜までやってね?それとも門限とかあんの?」
「いや、無いけど」
「じゃ、行こーぜ。まだ間に合うっしょ」
結局、今、二人でコトコト電車に揺られてる。
気まずくて、会話はない。
それが余計に気まずくて、隣だから顔を見るわけにもゆかず、ひたすら電車広告を見つめ続ける。結婚情報誌の広告が目に痛い。
間に合ってたら、もう少し幸せな気持ちで揺られていたんだろうか。
それともやっぱり、惨めなんだろうか。
向かいの窓にうつるクマのない顔が恨めしい。
「ねえ中野」
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