浮き沈み

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てくてくと二人、並んで歩く。 秋の紅葉には遅くて、冬景色には早い季節。 思ってたより寒いななどと思った。 隣があたたかくて。 それでとても幸せだなと思った。 ネズミーランドで見慣れたはずの横顔はまだ見るたびにドキドキしてならない。 「中野。今日どうしたの?」 「は?」 「こっち見てた?よな?なんか話したいことあった?」 気づいたから、誘ってくれたんだろうか。 泣きそうになる。 僕のことを気にかけてくれるあたりが。 聞いてくれる優しさが。 イケメン過ぎるところが。 誰にでも。 「あーいや、えっと」 ちゃんと話し出すまで、歯切れの悪い言葉を拾いながら待ってくれる。 「今日、いいことあったからおめでとうって言ってくれね?」 誕生日だって言ったら、気を使ってくれそうだから。 そこのところは伏せておこうと思った。 でも祝われたかった。 このくらいのわがままは許してくれるかな。 「そうなんだ?おめでとー?」 言わせたにしたって、言われるとやっぱり嬉しいんだよな。 ほんと、好き。
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