浮き沈み

7/12
前へ
/283ページ
次へ
「それで?何があったの?」 「誕生日なんだ」 観念して口にした。 「え、中野の?」 驚いた顔で聞いてくる。 本当に表情の豊かな奴だ。見てて飽きない。 「そ」 「ええー!!マジか。え、マジおめでとう!!!やば!」 久々にパリピ登場。 何がヤバイんだろうか。 「じゃ、今日は俺にご馳走させてよ、お祝いな」 なっ 悪いな、という感情を喜びの波が流していく。 本当にこいつはいつも欲しいものをくれる。 好きにならざるを得ないじゃないか。 もう、本当に。 滲みそうな涙はぐっと堪えていつも通りの顔。 ざわめく心と対照に相変わらずの無表情。 それは渋谷にどんな風に映ってるんだろうか。 「どうも」 「そっけねー!!」 流石に突っ込まれたわ。 思わず吹き出す。 友達、と言うには違和感のある曖昧な関係の2人の笑い声が道に響く。 ひとしきり笑って、ため息をつく。 「……そろそろ行こっかー」 「うん」 また2人して、てくてくと並び歩く。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1539人が本棚に入れています
本棚に追加