桃の香りと翔ぶ鳥

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「兄妹なんだ。今は違うけど、今度なる」 「は?」 「えっと」 モモコさんが割り込んだ。 「ごめんなさい、ややこしくて。私のママ、翔のお父さんと再婚するんです。それで、今は品川桃子って言います」 「兄妹になるんだし、苗字はおかしいよなってなって」 「それで、今度ここに転校するから、ここにいるの。手続きで」 「「ほんっとうにごめんなさい!!」」 最後、きれいにピタリとそろうところは、なんだか微笑ましくて、本当の兄妹のように映った。 驚きすぎて、勘違いで逃げ出したりして、そもそもそんなこと言える間柄ではなかったりして。 言葉が、出なかった。 というかそもそもなんで渋谷は僕に弁解しているんだ? 本来、説明などしなくてもいいような間柄なはずだ。 渋谷に恋人になってくれと頼まれてたわけでもあるまいし、なぜ僕がこの説明を受けている? 「中野?」 「……なあ、彼女ってじゃあ誰なんだ?」 聞くつもりもないことを聞いてしまった。 違う。 その答えは聞きたいわけじゃない。 「あ……」 渋谷が、焦った顔になる。 別に、なんと返事が来ようと僕には関係のないことだ。 なのになぜ焦る? なんで? ……余計な、期待はしたくない。
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