桃の香りと翔ぶ鳥

9/11
前へ
/283ページ
次へ
「でさーそれでクラスメイトがねーもー本当ばかなことすんのよ、さいっこう」 楽しげにケラケラと笑う桃子ちゃんに渋谷と二人で相槌を打つ。 「めっちゃ話すのな」 こそっと渋谷が言ってくる。 あはは、と二人で笑うと、むくれた顔で桃子ちゃんが突っ込んでくる。 「もー何してんの2人でー!」 ちゃんと話聞いてよー!と突撃してくる。 結局三人で爆笑するに至る。 「あはは。マジうける。てかもう着いたね!笑」 あっという間だった。 カラン 店の戸を開ける。 軽やかな音とともにいらっしゃいませ、と丁寧な声がする。 メニューを渡してくれた店員さんを引き止めた。 「この間は、食べかけのまま店を飛び出してしまってすみませんでした。美味しかったのに、失礼な真似をしてしまいました……。本当にごめんなさい」 店員さんは、あっという顔をした。 「あ、あの時の!いえいえ、お気になさらず……」 「あの。もう一度、同じケーキを、頼めませんか」 渋谷だった。 「いいですよ。少しお時間かかりますが、よろしいでしょうか」 「本当ですか!ありがとうございます!!」 あの日と、と言ってもほんの数日だけど、あの日と同じケーキで祝ってもらえることになった。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1539人が本棚に入れています
本棚に追加